口説







圭を見ていると、昔( というか、僕と知り合う前は)さぞかし魅力的な男性たちと恋愛ゲームを楽しんでいたんだろうなと思う瞬間ときがある。

洗練された口説きの文句。相手に嫌と言わせない、さりげない誘いのテクニック。僕をベッドに誘い込むときのスマートな手管や言葉。

彼は、その手の男性にはとっても魅力的だったろうなぁと思うんだ。

ただでさえ強力なオーラを持っている上に免疫のない僕には抜群の威力だ。

彼にめろめろの僕は、誘われたらもうひなたに置かれたチョコレートみたいにあっという間に溶けてしまう。

圭に言わせると、僕を口説くための言葉だからこそ出てくるのであって、それこそ僕を見つめているだけで泉のようにいくらでも湧いて出てくるなんて言っているのだけど、

あの手の語彙ってやっぱり経験からくるんじゃないかとひそかに思っている。

それを思うと胸の奥がちょっとだけちりりと痛むけど、今は僕のためだけにささやかれる言葉なのだから、文句を言うことは何もない。




そして、今夜もそんな言葉が僕の耳に吹き込まれる。

「君の背中はとても雄弁に語ってくれますね。特にここのあたりが」

すっと指で背骨に沿って撫で下ろされると、自分でも驚くくらいに反応してしまう。

「け、圭っ・・・・・!」

圭はソファーに座っていて、彼のひざの上に僕は背中から抱かれている。ケイを深く呑み込んだ姿で。

そっと耳に吹き込まれる言葉はそれだけで愛撫となる。

「ああ、ちょっとした言葉に震え、吐息を吹きかけると蝶のはばたきのように反応する。本当に君は敏感だ」

みみたぶを甘噛みされながらささやかれれば、じんわりと腰の奥を熱くさせてくる。

さっきから圭はゆるく動くだけで、僕に決定的なところまで追い上げてくれない。

もういいかげんつらくなっているのに。

僕はじれて自分から腰をくねらせて先をねだっているんだけど、まだその気は無いみたいだ。

だって、今も彼の左手はボクを握り締めていて、根元をきつく抑えてボクがイってしまうのを止めているのだから。

その上、なんとか衝動を抑えてほっとする間もなく、今度は煽ってくるかのように敏感なところを指先で撫で回したり、ちくりと爪を立てて僕が身を捩じらせるのを愉しんでいるんだ。

「も、もう、許して・・・・・!」

でも本当はこのまま終わってしまうのはいやだってことは圭にばれているんだ。もっともっと愉しみたいんだって。深い快楽に貪欲になっていることを知っている彼は、僕をじらして更なる快楽の深みへと進む手ほどきをしようとしているんだ。

とは言っても、圭と違って体力のない僕はその気はあっても限界ってものがある。

からだを起こして圭の胸にからだを寄せていたんだけど、ふらりと前かがみになってしまったらもうからだを起こせなくなってしまったんだ。

何とか体勢を整えようとしても上半身を持ち上げるための腕の力はなくなっていて、肘を膝についてそれ以上崩れないようにするのが精一杯。

ずるりと楔となっていた彼が抜けかけて、あわててソファーから落ちないようにぐっと肘に力をこめた。

「ああ、君の背中をみていると、昔天使というものが本当にいたのだろうと信じられますよ。この肩甲骨は間違いなく天使の羽根のなごりでしょう」

「ひっ!」

圭が僕の肩甲骨を噛んできたんだ。ちりっとした痛みはダイレクトに下半身に響く。その上痛みを謝罪するかのように肩の窪みをねっとりと舐めてくるものだから 、足の指先までひきつってしまう!

「ゆ、悠季・・・・・!そんなに締め付けないで下さい。これ以上僕を煽るつもりですか?」

「そ、そんな余裕がある、わ・・・・・けないだろ。僕は君でいっぱいになってしまってるんだから・・・・・!」

「ですが、熱くてうねっているんですよ。君は。まるで僕を情熱的に愛撫してくれているようで・・・・・うっ!」

圭の言葉を聞いたとたん、僕の中がきゅううっと痙攣するように締め付けていた。

次の瞬間、圭の態度が変わった。

「なっ・・・・・!」

僕の腰をぎゅっとつかむと今までの余裕なんてまったくなくなって、思い切り腰を打ち付けてきた!

それこそ粘り湿った音が、はっきりと僕の中から聞こえてほどに。

僕はようやく欲しかった刺激を受けて、あっという間に上り詰めた。

「あ・・・・・ああっ!」

でも、快感の余韻に浸っている時間はなかったんだ。すっかり敏感になっているのに圭はさらに深くつなげてきて、強引に追い上げてくる。

「ひっ・・・・・!」

もう僕は彼の首に腕を投げかけてしがみついているのが精一杯。

「だ、だめっ!触らないで・・・・・っ!」

圭の右手がボクをこすり上げてくるものだから、もう頭の中がぐちゃぐちゃになってしまって、もうイったのかまだなのかもわからなくなってしまって目を開けていても涙でぼやけてしまって何も見えなくて、ひたすらあえいでいるだけになっていた。

「あっ・・・・・!け、圭・・・・・っ!」

ふわりと目の前が白くかすんで・・・・・そのまま気を失ってしまっていた。





「・・・・・悠季、大丈夫ですか?」

ふっと気がつけば目の前には天井が見えた。

「あ・・・・・れ・・・・・?」

彼に背中から抱かれたままだった。肩に頭を預けていたから天井が見えたというわけ。

どうやら気を失ったのは一瞬だったらしい。

でも・・・・・同時に気がついてしまった。

「け、圭!?」

僕はまだ圭とつながったまま、だったんだ。

ケイはまだ、その・・・・・硬いままで、ゆるく腰を回しているものだから、反射的に僕は反応してしまう。

またものを食むような粘った音が下半身から聞こえてきた。それは僕の貪欲さをあらわしているように思えて、思わず赤面してしまう。

でもそれは更なる快楽へのプレリュードのようなもので・・・・・・・・・・。

僕はまだ開放されそうもない。

だって、僕自身がそれを望んでいるのだから!







夜は、まだ深い。













圭のお誕生日のお祝いと言ったら、やっぱりこんな話でしょうか?
いつまでも二人仲良くいちゃいちゃしていて欲しいです。(笑)





2014.8/8 up